箕輪町「美空ひばり歌の里」館長の小沢さとしさん
更新:2013-8-17 6:00
本紙に「信州のむかし話」を連載している児童文学者で「美空ひばり歌の里」館長の小沢さとしさん(75)=箕輪町=が、ほおずき書籍から小説「松井須磨子物語」(A5判、220ページ)を刊行した。長野市松代町出身で「近代劇の扉をこじ開けた炎の女優」松井須磨子(1886~1919年)が、故郷を飛び出し、大女優として成功し、演出家、小説家の島村抱月を追って自殺する「直行的な生き方に絞って」書き下ろした。
小説はさまざまな資料を基に書かれ、▽女優への道▽「人形の家」の主役に大抜擢▽文藝協会から芸術座へ▽故郷へ錦を飾る▽抱月の死に絶望して-とドラマチックに物語が進む。
小沢さんは「須磨子が舞台で発した言葉は、近代化の流れの始まりを敏感に感じた当時の女性たちの間に議論を呼び起こし、いつしか女性解放の代弁者のようになり、その先頭に立つ役割を負わされた」とし、時代をリードした存在だった半面、大女優ゆえの孤独が浮かび上がる。
須磨子の物語を以前から書きたかったという小沢さんは「『ルンペンになっても頑張る』と芸に打ち込む。抱月との恋愛関係が取りざたされたが、そのお陰であれだけの演技ができたと思う。人に何と言われようと決めた道を行く。ぱっと咲いてぱっと散った、ボタンの花のような人生だった」と、劇的な人生の魅力を語る。
大正を代表する女優の松井須磨子と、昭和を代表する歌手の美空ひばりの生き方に共通点が多いと指摘。「須磨子が33歳、美空ひばりが52歳、2人で85歳の一生を全うしたように思えてならない」。時代を代表する女性2人の人生を重ね合わせる。定価1890円。県内の書店で販売している。